中学生の親が知っておくべき大学入試の今
つばめ学院の関口です。
学習塾を経営している私にとって、なかなか衝撃的なニュースが飛び込んできました。
大学入試で「繰り上げ合格」がなぜ急増? 上智は全体の半数近くに
記事の内容をざっくり書いておくと、
「2020年度と比較して”繰り上げ合格”(補欠からの合格)が大幅に増加した。上智大学では6,776人の合格の実に半数近い3.025人が繰り上げ合格となった。」
という内容です。
中学生の子を持つ保護者の方々からすると、「だから何なんだ」ということかもしれませんが、最後までお付き合い頂ければ「なぜ中学生の親に知ってほしいのか」を納得して頂けると思います。
前提のお話し
言いたい事をお伝えするために、いくつか前提となるお話しをしておかないといけません。
まず私が大学受験をした時代(20〜30年前)と比較すると、大学入試における「一般選抜(筆記テストの結果のみで合否を判断するもの)」の割合は大きく減っています。
逆に伸びているのが、「学校推薦型選抜(旧指定校推薦)」「総合型選抜(旧AO入試)」です。いわゆる「推薦型」といわれる選抜方法です。
学校推薦型選抜は基本的に高校の内申点で決まります。
私の同世代の方々からすると驚きかもしれませんが、私大の選抜方法では「学校推薦型」と「総合型」を合わせると5割を超えています。
つまり、当日の筆記試験一発で合否を決める方法はもはや「少数派」なのです。
もう1つ前提のお話しがあります。
それが「私立大学の入学定員の厳格化」というものです。
こちらもざっくりと書いてしまえば、
「募集人数を1,000人としているのに、1,500人も1,600人も合格させてはいけませんよ。」という国の方針です。
現在では1.2倍という規準がありますので、「1,000人」の募集であれば「1,200人」までの合格しか認められません。
違反をすれば「私学助成金の減額」というペナルティーを大学は受けることになります。大学の運営側からすれば、合格者を増やして収入を増やしても、助成金が減らされてしまっては元も子もないわけです。
大学の運営者になってみよう
やっと前提のお話が終わりました。
ここからは想像力を活用してイメージして頂きたいのです。
例えば、「日大の運営担当」が自分だと考えてみましょう。
募集定員を1,000人で考えます。
先ほどの「私立大学の入学定員の厳格化」で、認められる定員は1.2倍までという話がありました。
では、「日大の運営担当」は1,200人に合格を出すのでしょうか?
違いますよね。
だって、1,200人に合格を出したとしても、
「あ、早稲田に受かったんで入学しません」
「明治大学に進学します」
というような子が必ず出てきます。
1,200人に合格を出せば、実際の入学者数は1,200人よりも少なくなるはずです。
では、1,200人より多く出すとして、その人数は1,500人?1,800人?2,000人?
誰にも答えはわかりません。
確実に言えることは、実際の入学者が1,200人を超えたらペナルティーを覚悟する必要があるということだけです。
そこで登場するのが「推薦系」という入試形態です。
「合格を出したら”必ず入学する”」という形態があります。
それが「推薦系」です。
1,000人に入学してほしければ、1,000人に合格を出せば良いのです。合格通知を受けた生徒はそれを断りません(断れません)。
メッセージは何か
最初の記事に戻ります。
繰り上げ合格の増加というニュースは、私には「私大が一般選抜で出す”合格の数”に苦慮している」としか読めません。
そうであれば、大学がより堅実な「推薦系」の合格者数を増やす可能性が考えられるはずです。
実際に推薦系の合格比率はジリジリ上がっています。これは冒頭でお伝えした通りです。その背景「厳格化」の存在も否定できません。
もし「学校推薦型」のような推薦系入試が今後の大学入試の主戦場になるとした場合に重要な事はなんでしょうか。
答えは明確です。
評定平均
この1点です。
かつて、一般選抜で必要だったものが「試験当日の点数」という1点であったのと同様に、学校推薦型選抜では「評定平均」の1点です。
そして、その「評定平均」はなんと高校1年生からの平均です。
ここに中学生の親が知っておくべき理由があります。
なぜなら、この話を「高校2年生の親」が聞いたとしても、手遅れの可能性高いからです。
高校1年生は「部活と友達重視で」というのは、私が高校生だった昭和の常識ではありますが、令和の非常識です。
高校1年生の時からしっかり学校の成績を取る努力をする。何も特別な事はありません。埼玉県の中学生なら誰でもやっていることです。
しかし、高校生になったとたんに学校の成績を軽視する子が激増します。それは「現実を知らないから」というだけです。
知っているか、知らないか。それだけで大きな違いを生んでしまう知識というものが確実にあります。
その事実を把握したうえで、お子さんのためのより良い選択をご家庭で考えてみてはいかがでしょうか。
それができるのは、「中学生の親」だけなのですから。
最後まで読んで頂いてありがとうございます。